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名古屋地方裁判所 昭和33年(行)26号 判決 1968年3月08日

原告 株式会社新興社

被告 名古屋中税務署長

訴訟代理人 松崎康夫 外四名

主文

原告の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事  実 <省略>

理由

第一、原告会社が名古屋繊維取引所の仲買人を業とする株式会社であること、被告税務署長が原告に対し、本件第一係争期分の確定申告に対し、課税標準たる所得金額を四一四万一、一二七円と更正決定し、昭和三〇年二月二八日付をもつて原告に通知したこと、また、第二係争期分の確定申告に対し、課税所得金額を一一三万五、一三六円と更正決定し、昭和三二年三月三〇日付をもつて原告に通知したこと、更に、第三係争期分の確定申告に対し、課税所得金額を二六四万四、八四九円と更正決定し、昭和三三年三月三一日付をもつて原告に通知したこと、原告は右各決定を不服とし、同被告に対し再調査請求をなし、更に、被告国税局長に対し審査の請求をなしたところ、第一、第二係争期分については審査の請求を棄却し、第三係争期分については、更正決定の一部を取消し、その課税所得金額を二六二万三、三〇〇円とする各決定をしたこと、原告提出にかかる法人税確定申告書に添付された第一、第二係争期の貸借対照表および損益計算書がそれぞれ別紙一の一、二、同じく二の一、二のとおりであること、以上は当事者間に争いがない。

第二、そこで、被告らの右処分が違法であるかどうかにつき判断するが、まず順序として、第一ないし第三係争期に共通する争点につき検討し、ついで、各期における原告が違法として争う加算項目の適否について考察する。

一、第二、第三係争期の更正決定の適否

原告は、第二および第三係争期における被告税務署長の更正決定が、原告の確定申告書提出後三年近く経過してから通知がなされた旨争つているが、本件弁論の全趣旨によると、右各決定は申告提出期限から三ケ年以内の法定期間内になされている以上、原告主張のような違法は存しない。

二、本件各期の委託手数料の未収入金洩れ

被告らは、第一係争期の三四三万五、六九五円(審査決定の調査額五四三万八、四二五円)、第二係争期の二八万九、八九八円(審査決定の調査額一四二万八、二四二円)、第三係争期の四五五万〇、〇六四円は、いずれも当該期間中に発生確定した商品仲買取扱手数料のうち、未収入となつているものであるから、右各期の法人所得に加算すべきである旨主張し、原告はこれを争つている。

(1)  法人税の課税対象たる各事業年度の所得は、当該年度の総益金から総損金を控除した金額であり、総益金とは、法令に別段の定めあるもののほか、資本の払込以外において、純資産増加の原因となるべき一切の事実をいい、総損金とは、法令に別段の定めあるもののほか、資本の払もどし又は利益処分以外において、純資産の減少となるべき一切の事実をさすものとされる。

しかして、税法上、損益の帰属年度を決するについては、いわゆる現実収入主義(実現主義)と権利確定主義(発生主義)とが対立しており、法人企業のごとく規模が大きく且つ経理も複雑なものについては、課税の公平、明瞭および確実を期するうえから、発生主義をもつて妥当とする。しかも、<証拠省略>を総合すると、法人税では、売買損益帰属の時期は原則として売買契約効力発生の日とし、一般的には、現実の収支にかかわりなく収入すべき権利又は支出すべき義務の確定した時に損益の発生を認識すべきであるとし、一貫して発生主義をとつていること、ただ、商品仲買人の経済取引の実態に照して、昭和二八年八月二七日付、国税庁長官個別通達により、委託手数料については、例外の取扱を設け、決済のあつた日(売(買)玉委託取引に対しては、後日その委託者が買(売)玉し手仕舞して売買損益が確定した日)において、益金又は損金に算入することを認めることとしたことが認められる。従つて、原告の手数料債権はその建玉が手仕舞われたときに確定し、法人税法上のいわゆる益金に該当することになる。

(2)  <証拠省略>を総合すると、原告の帳簿上、すでに受託売買玉が手仕舞され、その損益が確定されている手数料のうち、第一係争期には一般顧客の綿糸分二三〇万〇、六六〇円、スフ分四六万三、一四〇円、富山昇分二〇八万四、三一七円、加藤清文分五九万〇、三〇八円の合計五四三万八、四二五円、第二係争期には一般顧客の綿糸分二八万七、四〇〇円、毛糸分六万七、二五〇円、富山昇、加藤清文分一〇二万三、四五〇円、下村三郎分五万〇、一四八円の合計一四二万八、二四八円の各手数料債権、第三係争期には一般顧客分四万八、九一〇円、加藤清文の綿糸分二万五、二四〇円、スフ分二、三三二円、富山昇の綿糸分三万九、九五〇円、スフ分八四〇円、下村三郎分四二万八、九〇二円の手数料債権、更に、加藤清文、富山昇、下村三郎の委託取引は決済されているので、取引所差金勘定から未収入勘定に振替えるべきもの、加藤清文分(益)七八万七、四五〇円、富山昇分(益)四五万二、〇六〇円、下村三郎分(損)五二四万三、四〇〇円の差引損四〇〇万三、八九〇円との合計四五五万〇、〇六四円の各計上洩れ債権の存在が認められる。

そして、右各手数料債権を、原告が当該確定申告の決算書に計上していないことは、本件弁論の全趣旨によつて明らかであるから、被告らが、右各未収入金洩れのうち、第一係争期分については三四三万五、六九五円、第二係争期分については二八万九、八九八円を、第三係争期分については四五五万〇、〇六四円を、それぞれ法人所得に加算し、これに基きなした第一、第二係争期の更正決定、並びに、これを維持した第一、第二係争期の審査決定、更に、金額に誤りのあつた第三係争期の更正決定を一部取消し、右金額を加算した第三係争期の審査決定は、いずれも相当なりというべきである。

(3)  原告は、昭和二八年八月二七日以前は、現金収入時を基準とするから、第一係争期において右同日までの手数料を所得として加算するのは違法である旨主張する。

<証拠省略>によると、昭和二八年八月二七日付直法一-九六、直所一-六四国税庁長官通達は、その冒頭において「今後処理するものから」右通達を適用すべきことを定めていることは明らかであるから、第一係争期分についても、被告らが右通達に従つて原告の申告所得に対してなした更正処分は適法といわなければならない。なお、原告は第一係争期中に六百数十万円の回収不能の未収入金があつたから、この分を控除すべきであると主張するが、本件弁論の全趣旨によると、第一係争期中においては、かかる損金の発生したことは、原告の決算書によつても認められないところであるから、第一係争期中に発生した損金と認めることはできない。

三、富山昇、加藤清文、下村三郎の各名義による取引が原告の自已玉であるか否かについて、

原告は、前記委託手数料の未収入金洩れ(加算分)のうち、富山昇・加藤清文・下村三郎名義分の取引は、いずれも原告の自已玉であるから、手数料の未収を建てる必要はないと主張する。

(一)  前記三名名義の取引が架空名義の取引であることは、当事者間に争いがなく、<証拠省略>ならびに弁論の全趣旨を総合すると、次の事実が認められる。

(1)  第一係争期および第二係争期の原告の決算書には、いずれも自己売買損益の表示がないこと、

(2)  第一係争期の貸借対照表に計上されている未収入金の中には、富山昇分九万六、九六四円、加藤清文分三九九万七、一六四円が、個人の清算取引に対する未収入として、一般顧客と同様原告の資産に計上されていること、

(3)  原告の監督官庁(名古屋通商産業局)に対する報告書に記載されている会社財産内訳中に、加藤清文に対する未収入金五九〇万九、九三一円が含まれていること、

(4)  本件係争期以降の昭和三三年一〇月一日から同三四年三月三一日間の事業年度貸借対照表に計上された未収入金の中に、加藤清文分の三四〇万九、九三一円が含まれていること、

(5)  第二係争期の貸借対照表負債の部に計上された委託者証拠金の中には、加藤清文からの二〇万円、富山昇からの二万五、〇〇〇円、下村三郎からの一〇万円が含まれており、右加藤分については訴外恵美龍雄が二〇万円を立替えていること、

(6)  原告は、自己玉の売買をして多額の損失が出れば会社の経理内容が悪化して顧客に迷惑がかかるので、監督官庁から自己玉売買を禁止するよう行政指導を受けていたこと、

(7)  商品取引所法では、商品仲買人の自己売買を禁ずる規定はなく、偽つて自己の名を用いないで取引をすることが処罰せられることとなつていること、また自己玉では委託手数料も委託証拠金も必要としないこと、

右認定に反する<証拠省略>は、前掲各証拠に照らし採用できない。

以上の事実を総合すると、前記三名名義の取引が、原告の自己売買ではなく、第三者による清算取引であるということができる。

(二)  更に、<証拠省略>をあわせ考えると、原告の加藤清文未収入金勘定において、加藤清文に対する未収入金であるにも拘らず、昭和二八年一一月二〇日に訴外恵美龍雄の預り金九四万円をもつて同勘定に入金していること、また、同年一二月二八日富山昇より返済として二八七万〇、四五二円が同勘定に入金していること、次に、同勘定において富山昇預り金として昭和二九年五月二八日に六二七万八、〇二三円、同年七月一六日に三一五万円、同年七月一九日に二五〇万円、同年七月二二日に二〇八万円、同年九月三〇日に一二八万四、三八一円、同年同日に九一万七、七二八円が同勘定に入金していること、一方、加藤清文未収入金勘定への入金に対応して、富山昇預り金勘定において、昭和二八年一二月二八日に二八七万〇、四五二円を同勘定から出金していること、なお、第二係争期中の六月一九日には、原告から加藤清文に対して二七〇万円の立替金が発生していること、

以上の諸事実が認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

右各事実を総合すると、真実原告の自己取引であるならば、「立替金」勘定は発生せず、また「加藤清文未収入金」「富山昇預り金」勘定についても現金による入出金は発生しないはずであるのに、その入出金による異動があることは、原告の自己取引売買ではないことを裏付けている。しかも、権利義務が別個に確定せられるべき他人名義の債権債務を決済するに際して、別の他人名義をこれに流用して決済することは、通常考えられないところである。これらの事実と、そもそも原告が訴外恵美龍雄の主宰する同族会社であること、本件の弁論の全趣旨に照らして明らかな事実を併せ考えると、前記三名名義の取引は、原告会社の代表者たる訴外恵美龍雄個人の取引であり、かつ同訴外人であつてはじめて右のごとき経理上の操作も可能といわなければならない。

よつて、被告らが、原告の第一ないし第三係争期を通じて前記三名名義の取引を原告の自己売買として取扱わず、訴外恵美龍雄個人の取引と認定し、右各手数料の未収入金洩れを益金に計上したことは相当である。

四、第二、第三係争期の売買損否認について、

<証拠省略>を総合すると、売買損として、原告の第二係争期の損益計算書(別紙二の二)中に、加藤清文、および富山昇名義にかかる売買損四七七万二、九六〇円、右名義分の未収手数料一〇〇万四、〇七二円(原告において売買損失勘定に振替)の合計五七七万七、〇三二円を、第三係争期の損益計算書(乙第三四号証の四)中に、下村三郎名義にかかる売買損一五五万九、四三〇円、右名義分の未収手数料六八万二、二〇八円の合計二二四万一、六三八円を、それぞれ計上していることが認められる。右事実に、前記二認定の各事実を総合すると、前記三名名義の取引が原告の自己玉ではなく、第三者の委託取引であることが明らかであり、又、原告は訴外恵美の主宰する同族会社であつて、代表者の恣意性が多分に窺われるところ、前記個人取引による損失を原告の損失とした場合には、法人税の負担を不当に減少させる結果になると認められる。よつて、被告らが、法第三一条の三の規定により前記各売買損を否認して益金に加算したのは正当である。

もつとも、原告は、ぼう大な損失金を第二係争期に引続いて第三係争期にも計上すれば、信用が失墜することとなるので、七四八万五、〇三八円のうち二二四万一、六三八円のみ損失金に計上し、残額は取引所差金のままにして持越し、次年度にこの損失金を計上して確定申告書を作成した旨主張するが、各年度の損金はそれが発生した当該年度の損金となすべきであつて、これを次年度に計上するがごときは、税法上許されないところである。したがつて、原告が当該年度に計上しなかつた以上、被告らとしてこれを当該年度の損失として課税上考慮しなかつたことは、当然のことといわなければならない。

五、第一係争期の預り金否認について、

被告らは、原告が東洋紡績株式会社(以下東洋紡という)の株式四、〇〇〇株の売却代金八〇万八、〇〇〇円を、訴外恵美龍雄個人よりの預り金として処理しているが、原告の益金として計上すべきであると主張する。

そこで、先ず、東洋紡株式四、〇〇〇株の所有者が原告か恵美龍雄個人であるかについて考えてみるに、<証拠省略>を総合すると、右株式が原告会社の所有で、昭和二八年五月一四日ごろ一株当り二〇二円で売却されたことが推認できる。原告は、右株式を昭和二八年二月九日以降同三二年三月三〇日までの間所有し、同日当該四、〇〇〇株を五五万三、二八六円にて売却処分した旨主張し、<証拠省略>によると、右主張に沿う部分があるが、右は原告が訴外恵美龍雄の主宰する同族会社であつて、かつ青色申告以外のいわゆる白色申告によつていることから、会計組織および帳簿記載も不備であることに鑑み採用できない。却つて、前掲各証拠によると、東洋紡は昭和二八年五月一四日から同三二年三月三〇日までの間に二回増資をし、うち一回は半額無償であるのに引受権が行使されていないし、その間の配当金も入金されていないこと、また、原告主張の売却代金が、昭和三二年三月三〇日当時の株式市場時価に比較して著しく低いことなど総合すると、原告が昭和三二年三月三〇日までの間、当該株式を所有していた事実はなかつたといわなければならない。してみると、被告らが、右預り金を架空計上と認めて原告の法人所得に加算し、同時に、右株式の取得原価たる会社記帳簿価五五万三、二八六円を、その所得から減算して差額分だけ転売利益があつたと認定した処分は相当といわなければならない。

六、第二係争期の手数料戻否認について、

被告らは、原告が加藤清文および富山昇名義にかかる清算取引によつて発生した委託手数料のうちから、加藤清文分三九万九、八六四円、富山昇分九一万七、七二八円を手数料戻しとして計上し、これらを原告の委託手数料収入より減額したのに対し、法第三一条の三に基き否認する旨主張する。

<証拠省略>を総合すると、第二係争期中において、加藤清文および富山昇名義の手数料を従来普通の規定の四〇%として計算請求していたものを、格別の理由もなく半分の二〇%に改訂し、その差額二〇%相当分、すなわち、被告ら主張のとおりの合計一三一万七、五九二円を戻手数料として計上し益金を減少せしめていること、また名古屋繊維取引所受託契約準則第二〇条第二項によると、委託手数料は約定代金の千分の三ないし千分の八の範囲内において減額しうるとするのに、右限度を超過し、商慣習に照らして余りにも戻手数料が多すぎることが認められる。

原告は、右二名名義の売買玉は、自己玉であるから本来取扱手数料を徴収する必要がないところ、監督官庁の指導もあつたので、自己玉であるが架空名義をもつて売買している以上、取扱手数料を計算せず放置していくわけにいかないため、形式上の措置として取引所へ納入する実費のみ徴収したにすぎないと主張する。しかしながら、加藤清文および富山昇名義の取引が、原告の自己取引でないことは前示認定のとおりであり、かつ、<証拠省略>によると、原告は株主の三人で有する株式の合計額が株式金額の百分の五〇以上となる法第七条の二第一項に該当する同族会社であることが認められるから、被告らにおいて右戻手数料を法第三一条の三の規定によつて否認のうえ、原告の益金にて加算したことは相当といわなければならない。

七、第三係争期の紡績部利益金計上洩れについて、

原告が、昭和二九年一二月二六日から姉妹会社新興繊維工業株式会社の設備一切を賃借して原告の毛糸紡績部として発足したことは、当事者間に争いがなく、<証拠省略>によると、第三係争期において、右紡績部利益を七万五、二二一円一〇銭とする決算が確定せられ、その貸借対照表は原告の株主総会においても承認可決せられていることが認められる。

原告は、第三係争期中は三ケ月しか毛糸紡績部を経営せず、かつ新興繊維工業株式会社との間に賃貸借料が当時確定していなかつたので、右利益金計上洩れ七万五、二二一円があつたとしても、この利益金より工場設備の三ケ月間の賃借料を差引いた場合、原告は当然損失金を計上せざるを得ないことになると主張する。

<証拠省略>ならびに弁論の全趣旨を総合すると、前記賃借契約においては、原告は賃借料の額については何ら定めず、原告の意思によつて一方的に決定し支払うこととしていること、しかるに、原告は第三係争期末の昭和三〇年三月三一日まで、取締役会において、支払をなすべき賃借料の額を確定していないこと、第三係争期の確定申告書および貸借対照表負債項目にも、未払賃借料の計上がなされていないことが認められる。

してみると、当該事業年度において、一つの取引金額が未確定であるとしても、他の確定した取引金額のすべてについて、発生した所得または損失額ともに次年度へ繰越すことは、所得を一営業年度を単位として算定する法人税法上認められないところである。

右認定のごとくに利益が上つている以上、これを利益金の計上洩れとして原告の所得に加算した被告らの処分は、いずれも相当といわなければならない。

八、第三係争期の売買益計上洩れについて、

被告らは、第三係争期における原告の自己売買取引のうち一三七万五、九八〇円は、すでに精算ずみの売買益であるが、益金に算入されていないので加算した旨主張する。よつて、考えるに、原告が被告ら主張の右金員を益金に算入しなかつたことは、原告において明らかに争つていないので自白したものと看做す。そして、<証拠省略>によると、右金員の内訳が被告ら主張のとおりであることが認められる。

原告は、第三係争期は前期に引続きぼう大な損失を蒙つたので、それを対社会的に隠すため、本事業年度においては売買損の金額を極力少く決算書に計上することとし、反面利益の計上も差控えたものであり、しかも、原告は次年度の決算において、被告の指摘した売買益計上洩れを一円も違わずそのまま売買益として計上しているものであると反論する。

しかしながら、売買損否認の項で説示したとおり、権利確定主義を原則とする法人税法の下では、所得計算の基礎となる益金は、それが発生確定した当該年度の損金となすべきであつて、これを次年度に計上するがごときは税法上許されないところである。従つて、原告の反論は期間的損益配分の原則を無視した主張として失当であり、これを法人所得に加算した被告らの処分は相当である。

第三、以上の次第で、被告税務署長が、原告において違法を主張する各加算項目の金額を、原告の各係争年度の法人所得に加算して、本件各更正決定をなしたのは適法であり(但し、第三係争期の未収入金洩れ、および未収入金洩繰入ならびに取引所差金勘定の金額は、被告国税局長の審査決定における所得金額算定時の額が相当である)、且つ、その他の点につき本件各更正決定に違法を認むべき何らの主張立証もないから、その取消を求める原告の請求は理由がない。

従つて、被告国税局長が、第一、第二係争期の更正決定に対する審査請求を棄却した決定についても、更に、第三係争期の更正決定につき、その一部を取消して該年度に対する課税所得金額を二六二万三、三〇〇円とし、その法人税額を一一〇万一、七八〇円、加算税額を五万五、〇五〇円とした審査決定も、共に違法でないことが明らかであり、その他右各処分に違法と認むべき何らの主張立証もないから、右各処分の取消を求める原告の請求も理由がないというべきである。

よつて、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 山口正夫 大山貞雄 谷口伸夫)

別紙<省略>

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